中学校2年生に薦めたい本100冊vol.3 6月

これがサイエンスブックリーディング!~自然科学の新書本

科学の時代、といわれていますが、
身のまわりはどんどん
ブラックボックス化し、
どのような科学技術が使われているか、
わからなくなってきています。
中学校の3年間の理科の授業時間は、
かつての290時間から
385時間に激増しましたが、
それでも科学的思考力を育成するには
まだまだ十分ではありません。
それを補うのはやはり読書でしょう。

では何を読めばいいか?
すでに中学校1年生向けの
自然科学の新書本8冊は
紹介済みですので、
中学校2年生向けの8冊を
セレクトしてみました。

その1:
「これからの防災・減災がわかる本」
(河田惠昭)

私たちの国は
自然災害を避けることのできない
宿命を背負っていると
言っていいでしょう。
だとすれば
いかに被害を最小限に防ぐか、
それが「防災・減災」です。
本書はそうした「防災・減災」の考え方や
基本的な行動について、
中学生にもわかるように書かれた
貴重な一冊です。

その2:
「細胞のはたらきがわかる本」
(伊藤明夫)

一人一人の人間が
それぞれの役割を担いながら
一つの大きな社会が
できあがるのと同様に、
一個一個の細胞が緊密に連携し、
一人の人間をつくり上げているのです。
細胞は顕微鏡がなければ見えません。
それを目に見えるものに例え、
あたかも「見える」ようにとらえさせる。
それによって知識だけでなく、
豊かな自然観・生物観まで
形成できるようになっているのです。

その3:
「モグラ博士のモグラの話」
(川田伸一郎)

モグラのイメージは
ヘルメットにサングラス、
ツルハシを持った
マンガ的イラストしか
頭に浮かびません。
あと特撮で鼻にドリルのついた
モグラ型ロボットでしょうか。
モグラという生きものは、
一般にあまり知られていないどころか、
研究者の間でもまだまだ
未知の存在だったとは驚きです。

その4:
「天気ハカセになろう」(木村龍治)

筆者は、日々変化する天気を、
毎日の献立にたとえています。
天空に姿の見えない
「天気シェフ」がいて、
地上の私たちは
毎日その「天気シェフ」の
お任せ献立を食べている。
言われてみればその通りの喩えです。

その5:
「ロボット創造学入門」(広瀬茂男)

著者はどんな人物か調べてみると…。
日本のロボット工学者。
独創的なロボットを多数開発している
ロボット工学の世界的権威。
東京工業大学名誉教授、
同大学工学博士。
ヘビ型ロボットを始め、
歩行ロボット、惑星探査ロボット、
地雷探査ロボット、全方向移動ロボット、
ロボット要素等で多くの業績がある…。
こんなすごい人が書いていたのか!

その6:
「5アンペア生活をやってみた」
(斎藤健一郎)

筆者の発想は、
東日本大震災とそれに起因した
福島第一原発事故から
出発しているのです。
震災発生時に
福島で生活していた筆者は、
原発で生活を破壊された人たちの姿を
目の当たりにします。
東京に戻った筆者は、
原発でつくられた電力を
ふんだんに使っている生活に
疑問を感じるのです。そして
5アンペア生活を決意するのです。

その7:
「バッタを倒しにアフリカへ」
(前野ウルド浩太郎)

著者は純粋に少年の頃に思い描いた、
昆虫学者になりたいという夢を
追っているのです。
根本にあるのは、ファーブルに憧れ、
虫を愛し、虫に愛されたいという
一心なのです。
しかし、決して
サクセスストーリーではありません。
本書の「面白さ」の
影から伝わってくるのは、
「自分の好きなことを
職業とすることの困難さ」なのです。

その8:
「昆虫はすごい」(丸山宗利)

自然科学の新書本で、
売れる本は決して多くはありません。
科学者が著した本は、
専門性が先走ってしまって
一般人が読むには
難しすぎる本が多いからです。
その点、本書は読み手の視点に立った
親切な本です。
本書を手にするであろう多くの人たちが
「昆虫」に何を期待しているのかを
しっかりイメージして
書き進められています。

1はこれからの日本人に必要な
防災教育に関わる内容、
2・3は中2の前半で学習する
「動物の世界」に関わる内容であり、
この時期の理科の授業に
直接関係するものを選びました。
4は秋頃に学習する予定の
「天気の変化」についての内容です。
5は工学技術に関わる内容であり、
進路を考える上で
参考にできる内容です。
6は「電流」に関するものであり、
中3の「エネルギー」にも
つながる内容です。
学術的なことはさておき、
若い著者の体験記の要素が多く、
読んで楽しいと思います。
7・8は2・3と同じく
「動物の世界」に関わるものですが、
この2冊だけ
岩波ジュニア新書以外から
選んでみました。中学生でも
十分に読みこなせる内容です。

こんなすばらしい本が
世の中にはあるのですが、
残念ながら、
私の住む地方の書店では
見かけることはありません。
図書館でぜひ探して欲しいと思います。

(2020.5.15)

Konstantin KolosovによるPixabayからの画像

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